
秋の一日。
秋田県の大館から十和田湖を目指して車を走らせる。
峠を降り、湖の湖畔沿いに進むと、
奥入瀬(おいらせ)渓流の入り口が迎えてくれた。
写真を見返すと、あの日の涼やかな空気まで蘇ってくるようです。
奥入瀬渓流とは


秋田・青森両県の十和田湖から流れる川が奥入瀬渓流を作る。滝、川、手つかずの自然、紅葉が美しい。
青森県と秋田県の県境にまたがる十和田湖。
湖から東方向(十和田市)に向かって奥入瀬川は流れ出す。
そのうち、子ノ口(ねのくち)から焼山(やけやま)までの約14kmが奥入瀬渓流と呼ばれています。
深い自然林に包まれた渓流沿いには、大小の滝や川の瀬、苔むした岩が次々と現れ、歩くほどに表情が変わっていきます。
圧倒される自然の力


水量が豊富な川の流れ
奥入瀬でまず心を奪われるのは、何といっても豊かな水の流れです。
静かに滑るように流れる場所があるかと思えば、
岩にぶつかり、白いしぶきを上げながら激しく流れ下る場所もある。
その変化がとても面白く、歩いていると「次はどんな景色が現れるのだろう」と、自然と足が先へ進みます。
滝また滝の連続


奥入瀬渓流は十和田湖、そして八幡平とともに、十和田八幡平国立公園を代表する景勝地の一つです。
もちろん、公園内の動植物は岩を含めて採取は禁止です。
持ち返ることができるのは「感動と写真」とはよく言われること。
心の中に、消えない思い出をしまいこみましょうか。


雲井の滝に着きます。
代表的な銚子大滝をはじめ、この雲井の滝など、渓流にはいくつもの滝が連なっています。
特に子ノ口から石ヶ戸にかけては、滝や瀬、奇岩など見どころが集中している区間です。
渓流を車で通るとき、駐車場の心配はいりません。
有名な観光ポイントの近くには駐車スペースがあるからです。
3~4台分のところもあれば、石ヶ戸休憩所(トイレ、自動販売機、売店あり)のように観光バスも含めて数十台分の車を停める場所も。
木漏れ日の遊歩道を歩く


川面に近く水の音が心地よい遊歩道
豊かな水流が奥入瀬渓流の一帯をまるで湿原のようにしたという。
秋田・青森両県にまたがる十和田湖から、水が流れ下る。
水は低地を流れ、水量に応じて水路を変えていくのだという。
そのため、遊歩道は川面に近い。
川岸に降りて、手を水に浸すと冷たかった…。
手つかずの森を歩く気持ちよさ
それだけなのに、普段の生活ではなかなか味わえない開放感があります。
奥入瀬の魅力は、水だけではありません。
渓流の両側には深い自然林が広がり、頭上には木々の緑。
足元には苔や小さな植物。
岩の間を縫うように流れる水が、森全体をしっとりと潤しています。
樹木の根元にキノコを見つけた。そして森の気配


大樹の大きさ、ツルの生命力に目を奪われる。
ふと、根元に目をやると、きれいなキノコ。
目を凝らすと、近くにいっぱいキノコが兄弟のように並んでいます。
もちろん、採取は禁止です。
晴れた日には木漏れ日が水面にきらめき、少し立ち止まれば、聞こえてくるのは水の音と森の気配。
「観光地を見て回る」というより、森の中に自分が入り込んでいくような感覚です。
見所が多い石ヶ戸(いしげと)~子ノ口(ねのくち)


奥入瀬でぜひ足を止めたい場所のひとつが石ヶ戸(いしげと)です。
奥入瀬渓流は約14kmにわたって続きますが、全区間を歩かなくても、
石ヶ戸から子ノ口までの約9kmには見どころが多く、散策に適した人気の区間です。


巨岩とカツラの木の物語


石ヶ戸(いしげと)の岩屋の近くに休息所があります。
駐車スペースが広く、トイレも近いです。
「石ヶ戸」とは、この地方の方言で「石でできた小屋」、つまり岩屋を意味します。
そこには大きな一枚岩があり、カツラの木に支えられるようにして、まるで天然の岩屋のような姿を見せています。
これが「石ヶ戸」という地名の由来です。
そして、この岩には少し怖くて、どこか物語を感じさせる伝説があります。
美人盗賊「鬼神のお松」


その昔、この岩屋を根城にしていたのが、「鬼神のお松」という美人盗賊。
旅人から金品を奪っていたという伝説が残されています。
深い森の中にひっそりと残る巨大な岩と、それを抱くように立つカツラの木。
その姿を眺めていると、昔の旅人がこの森を歩いていた時代に、ふっと時間が巻き戻されたような気持ちになります。
奥入瀬渓流の始まりは、風光明媚な十和田湖


奥入瀬の旅は十和田湖から?(まで?)
十和田市側から入ると、奥入瀬渓流をたどった先に待っているのは十和田湖。
逆に秋田県側からなら、発荷(はっか)峠を下った道を右折し、渓流の入り口へとたどり着きます。
十和田湖は、約20万年前に始まった火山活動により形成されたカルデラ湖です。
カルデラ湖とは、噴火によってできた陥没に、長い年月をかけて雨水が貯まってできたものです。
水深は最大327m。日本の湖沼では第3位の深さを誇ります。
深い藍色をたたえた湖面と、周囲を取り囲む山々がつくる景色は、渓流とはまた違った静けさがあります。
湖畔では遊覧船に乗って、中山半島や御倉半島を眺めながら湖上の時間を楽しむこともできます。
休屋(やすみや)から子ノ口までは遊覧船で約1時間。湖を眺めたあと、子ノ口から奥入瀬を歩くという組み合わせもおすすめです。
さらに、湖畔にはキャンプ場もあります。
なかでも宇樽部キャンプ場は、御倉半島を望む湖畔にあり、森と湖に囲まれてゆっくり過ごせる場所。
キャンプを拠点に、奥入瀬渓流の散策やカヌーなどを楽しむ旅も魅力的です。
アクセス――十和田湖側から&十和田市側から


奥入瀬渓流の遊歩道わきには、巨大な岩がいくつも林立しています。
遊歩道の近くにある巨大な岩(壁)。巨大火山の名残を感じます。
なにもかもが手つかずの自然。


奥入瀬渓流は、十和田湖側の子ノ口から下流の焼山方面へ向かうルートと、青森・八戸方面から焼山側へ入るルートがあります。
十和田湖・秋田県側からは、国道102号を利用して子ノ口方面へ。十和田湖を楽しんでから奥入瀬へ下るドライブにも向いています。
青森県側からは、新青森駅から車で約1時間30分、八戸駅から約1時間が目安。公共交通では青森駅・新青森駅・八戸駅から十和田湖方面へのJRバスが運行されています。
マイカー交通規制


将来の「車のない風景」を目指して、
紅葉の最盛期には臨時のマイカー規制が行われます。
奥入瀬渓流では、自然環境の保全と渋滞解消を目的に、国道102号(奥入瀬渓流沿いの道)のマイカー交通規制が試行されています。
今後、バイパス整備が進めば、渓流区間には観光バスを含めた車両が入らない「車のない奥入瀬」を目指す取り組みが進んでいます。
渓流のすぐ脇を走る車の音がなくなれば、水の音、鳥の声、森を渡る風が、今以上に身近に感じられることでしょう。
奥入瀬の自然を未来へ残していくための取り組みとしても注目したいところです。
まとめ


変幻自在の姿を見せる奥入瀬。
ここに載せた写真は2023年10月25日に撮ったものです。ですから、紅葉がかなり進んでいる状態でした。
写真の中には、勢いよく流れる水、緑に包まれた森、苔むした樹木と岩、そして静かな十和田湖が残っています。
けれど、写真には写りきらないものがありました。それは、
- 歩いている間ずっと聞こえていた水の音。
- 森の中を抜けてくる涼しい風。
- そして、立ち止まった瞬間に感じる、奥入瀬の深い静けさです。


写真のような光景もありました。奥入瀬渓流の秋は、様々な表情をみせてくれます。
奥入瀬渓流は、ただ「景色を見る」場所ではなく、
水と森の中を歩きながら、自然そのものを感じる場所なのだと思います。
次に訪れるときは、急いで名所を巡るのではなく、少しゆっくり歩いてみたい。
そしてその先では、十和田湖の静かな湖面を眺めながら、もう一度この旅を振り返ってみたいと思います。
水の音を聞き、森を歩き、湖を眺める。
奥入瀬と十和田湖には、そんな贅沢な時間がありました。



HISから【HIS首都圏発|新幹線で行く添乗員同行の旅】が発表されていました。3日間で東北の紅葉・絶景を回る旅です。
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