
最近のことでございます。
あるところに、おじいいさんとおばあさんが住んでいました。
雪国にも、長い冬が終わって春が訪れる季節になりました。
爺さんは友達に誘われます。「かたくりの花をみにいかないかね」
「かたくりの花をみにいかないかね」
おばあさんは、家で洗濯をしています。おじいさんは、やまに、かたくりを見に行きました。「山全体が、かたくりの花でいっぱんなんだって。爺さんも観に行かないかね」と友達に誘われたからです。
爺さんは、花がとっても大好きな、優しい人です。二つ返事で「おお、いいよ。一緒に連れて行っておくれ」と答えました。
日課の持ち物点検をして、出発です
さて、行く当日です。おじいさんは、いつもの出かける日課として、持ち物の点検を怠りませんでした。
「腕時計、眼鏡……」ーー<爺さんは、すこし目が悪いのです>
「マスク……」ーー<この頃は、コロナという、とても感染しやすい病気がずーーっと流行っているものですから、必需品となりました。
車の運転ができるスーパーお爺さん
「財布と家の鍵、それと車の鍵もじゃ」ーーなんと、爺さんは100に手が届きそうなくらい歳をとっていましたが、車を運転して、友達を載せて山に行くというのです。
おばあさんに「行ってくるからね」と元気に出発!
さて持ち物の点検が終わったお爺さんは、「ばあさんや、行ってくるからね。留守の間にオオカミに襲われないように、家の鍵は厳重に閉めておいてくれよ」と言いながら、家を出ました。
ブーっ!! 車が出ます。途中で友達を連れて、出発しました。
山の麓では桜が咲いていました

山の麓に着きました。桜がきれいに咲いているではありませんか?
「これはこれは、めでたいことだ。幸先がいいぞ」
お爺さんは、山道をどんどん進んでいきます。
「あっ、そこにあるぞ。あそこにもある」
山全体がかたくりでおおわれています。素晴らしい景色じゃのう

薄紫色のかたくりが、山だけじゃなく、道のここそこに咲いています。歩いていくと、踏んづけてしまいそうです。お爺さんは、ゆっくりゆっくり、かたくりを踏まないように進んでいきます。

<でも、これって、ほんとうは、かたくりの赤ちゃんを踏んづけているんですね。かたくりの赤ちゃんは、一本の、ちょっとした草みたいなんです。それと、知っていましたか? かたくりは、種をアリさんに運んでもらうんですって>
アリさんが種を運んでくれるだって

(↑NPO法人 日本パークレンジャー協会のサイトに載っていた写真です。)
「種の上に、アリさんが大好きな甘い蜜があって、アリさんはそれを食べると、巣の外にポイっと種を捨てるんです。それで、種が遠くに運ばれて、かたくりは増えていくんだよ」友達の友達が教えてくれます。
<<へえーっ、そうなのか>>お爺さんは考えました。それでも、歩かないわけには行きませんから、慎重にかたくりの花を避けながら、進んでいきます。
「確かに、山全体がかたくりの花じゃのう」
赤いツバキに雪の鳥海山、きれいじゃのう

<あっ! これはツバキの花じゃないか?!>
お爺さんは大満足です。
「ありがとう。きょうはきれいなものを見せてもらって、良かったよ」
と思ったら、山形県と秋田県にまたがってそびえる鳥海山まで、くっきり見えるではありませんか。雲がかかっていない鳥海山は久しぶりです。

山から降りて、お爺さんはすこし休みをとって、友達を載せて家に向かいました。
「あっ! 家の鍵がない」お爺さんの顔は青ざめました

車の中から山を見ると、新しい芽が芽生えています。お爺さんは心ウキウキ。
さて、車から降りるときです。
「あっ! 家の鍵がない。確かに、小さな財布の中に、鍵をいれておいたんだがなあ。黒くて小さい財布が見つからんぞ。これは困ったことだ。どこかに落としたのかな」
お爺さんは、必死になって、車の中を探しました。かがみこんで、車の床を見渡しましたが、ありません。
「これは、大変だ。どうしよう」
お爺さんの頭は、心配でぐるぐる回っています。<<家に帰る途中で、車からちょっと降りたから、落としたのかな。まさか、かたくりがきれいだっし、「どろの木」があるよ、なんて言われたから、興奮してて落としたのを気づかなかったのかなあ>>
心配で心配でしかたがありません。
探しても探しても見つかりません。<落とし物として届いていないかなあ>
でも、どうしようもありません。<落とし物として、誰かがお巡りさんに届けれくれるだろう>そう思いながら、家に帰りました。

「おばあさんや、家に入るカギをなくしたから、開けておくれ」
「おかえりなさい、お爺さん。はいはい、開けてあげますよ。でも、どうしたことでしょう。お爺さんにしては珍しいね。カギをなくすなんて」
ギーっといいながら、扉をあけますと、おばあさんの笑顔が見えます。すこし、おじいさんはホっとしました。ことの顛末をおばあさんに話すと、「それは仕方ないわね。なんとかなるでしょう」。おばあさんは、いつも優しくて、心が安らぎます。
部屋に入ったお爺さんはビックリ仰天。そこには黒いものが

©NASA/ESA and Digitized Sky Survey 2
お爺さんは、頭がぐるぐるしたままで、自分の部屋に入っていきます。大変な勉強家で、部屋には天井までびっしり古文書が詰まっています。
そして、何気なく、机の引き出しを、のぞいて見ました。すると、どうしたことでしょう。小さな財布ーー家のカギも入った財布がそこにあるではありませんか。
おじいさんはびっくり仰天。そして、ホッとしました。<<ああ、良かった>>

お爺さんは、つくづく思いました。<<家を出るとき、自分でカギをかけて出かけなかったんだなあ。それに日課の点検もしておかなかったんだ。これからは、その二つをしっかり守っていこう>>
人間は、間違えることはよくあります。それでも、その失敗を教訓にして成長していけるのが人間というものです。「失敗は成長の種」というお話でした。おしまい。
とっぴんぱらりーのぷーっ。

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